Response to TCFDTCFD提言への対応

天満屋ストアは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース[Task Force on Climate-related Financial Disclosures])の枠組みを基に、当社の事業に影響を与える気候変動のリスク・機会を把握、分析し、適切なリスクマネジメントを行い、これを事業戦略に反映させるとともに、適切な情報開示に努めてまいります。当社は、事業を通じて、地球温暖化の原因とされているCO₂等の温室効果ガス排出の削減に貢献しながら、持続的な成長と当社経営理念の実現を目指してまいります。
情報開示の内容については、サステナビリティ委員会主導のもと、毎年見直しを実施し、内容の充実を図ってまいります。

2024年5月

ガバナンス体制

天満屋ストアでは、事業活動を通じて持続可能な社会を実現するため、サステナビリティ委員会を設置しました。気候変動対応に対する取り組みについて、サステナビリティ委員会にて方針を決定、CO₂等の温室効果ガス排出量など環境に関連する状況を各部署で共有し、全社での進捗状況の監視や内部統制委員会を通じて取締役会への報告等を行っています。今後もサステナビリティ委員会では、取締役会と連携しながら、推進施策の決定や全社の取り組みの監視を行ってまいります。

ガバナンス体制

サステナビリティ委員会の
概要

委員長/議長 代表取締役社長
担当役員 管理本部長
事務局 人事総務部総務部門
委員会構成メンバー 営業本部長、管理本部長、各商品部長、店舗運営部長、財務企画部長、人事総務部長
議論内容 1.サステナビリティの基本方針、中長期目標、推進施策
2.その他サステナビリティに関する重要事項
3.環境(Environment)への対応に関する事項
4.社会(Social)への対応に関する事項
5.ガバナンス(Governance)への対応に関する事項
6.進捗状況に関する事項
7.その他、前各号に関して委員会が必要と認めた事項
開催頻度 年1回以上

戦略

当社は、気候変動に関連する将来的なリスクや機会を整理し、各リスクや機会が当社へ与える財務の影響について特定を行いました。気候変動に関連する将来的なリスクや機会の対応策については、現在実践中あるいは計画中の内容も含め、今後整理・検討してまいります。
今般特定したリスクや機会、及び対応策については、定期的な見直しを行うことで、気候変動に関する変化へ機動的に対応してまいります。

シナリオ分析の検討ステップ

シナリオ分析を以下のステップで行い、気候変動に対するリスクや機会を特定し、財務への影響を評価致しました。

1分析対象範囲・シナリオの特定

気候変動の影響を特定するため、分析対象の企業と事業、シナリオ及び分析の時間軸について特定しました。

対象の企業 天満屋ストア
対象の事業 小売事業
シナリオ 気温上昇2℃シナリオ/4℃シナリオ
分析の時間軸 2℃シナリオ:2030年
4℃シナリオ:2050年

2℃シナリオは、主にGHG排出削減に関する政策が推進することによる移行リスクが想定されます。脱炭素に向けた各種政策が短期の時間軸で制定されることを想定し、2030年を分析の時間軸としました。
一方で4℃シナリオは、主に異常気象を主因とした物理リスクが想定されます。異常気象による物理リスクが顕在化するのは中長期の時間軸であると想定し、2050年を分析の時間軸としました。

2リスク項目の列挙

気候変動により生じると想定されるリスクと機会を分析しました。
その結果、当社では、2℃シナリオにおいては炭素税など規制が強化されることによる影響は大きいものの、一部でコスト削減機会も考えられるとともに、今後CO2排出量を削減することでリスクは軽減されると想定されます。一方で4℃シナリオでは異常気象の甚大化による物理的な被害のリスクが大きくなる可能性が高いことが分かりました。

リスク・機会項目 内容 内容詳細
移行リスク 政策と法 炭素税の導入
  • 炭素税が導入されることにより自社の炭素税支払コストが発生する。
  • 炭素税が仕入価格に転嫁された場合、電力コストや物流コスト、原材料調達コストが増加する。
  • 炭素税導入に関連し、排出権取引が施行された場合、削減目標の実現のため、排出権を購入するコスト、排出上限引き下げに伴う取引価格が上昇する。
フロン規制強化
  • プラスチック代替素材(バイオマスプラスチックなど)の採用による仕入コスト増加が増加する。
プラスチック規制強化
  • 代替フロン冷媒に代わるグリーン冷媒(業務用冷蔵庫、エアコン)導入にかかるコストが増加する。
GHG排出量削減目標を達成するための対策
  • 国、業界団体などが定めるGHG排出量削減目標を達成するため、設備のリプレイス等による設備投資コストが発生するリスクがある。
市場 需要の変化
  • 消費者の環境問題に対する意識が向上することに伴い、低炭素商品に対する嗜好が高まり、低炭素商品の品揃えを充実させなければ売上減少、取組の遅れに対し評判が悪化する。
評判 株価への影響
  • 低炭素社会への移行対応ができず、顧客、投資家、社会の評価が低下し、株価低下や資金調達が困難になる。
物理リスク 急性リスク:
異常気象の
激甚化
異常気象による店舗被災にともなう休業
  • 豪雨の強度、頻度の増加に起因した水害、浸水により、店舗休業を余儀なくされ、売上が減少する。
異常気象による店舗被災にともなう店舗復旧コスト
  • 豪雨の強度、頻度の増加に起因した水害、浸水により、店舗設備が棄損し、設備復旧のためのコストが発生する
異常気象によるサプライチェーンの分断
  • 気象災害の増加・激甚化により、調達や販売、物流などを含めたサプライチェーンが分断され、店舗への商品供給が滞り、売上が減少する。
異常気象による通勤の分断
  • 気象災害の増加・激甚化により、従業員の被災や通勤への影響が発生し、事業活動が停滞し、売上が減少する。
慢性リスク:
平均気温の上昇
平均気温/海面の上昇に伴う原材料調達コストの上昇
  • 平均気温/海面上昇により農作物収穫量が減少、潜在的最大漁獲量の減少などが想定され、原料調達コストが増加する。
平均気温上昇によるエネルギーコストの上昇
  • 平均気温の上昇により、店舗および物流拠点における空調・冷蔵にかかる電気使用量が増加し、電気料金が増加する。
  • 電気使用量が増加した結果、電力単価が上昇する。
海抜の低い地域の店舗の浸水にともなう休業
  • 海抜の低い地域における店舗浸水による営業停止に伴い売上が減少する。
海抜の低い地域の店舗の浸水にともなう店舗復旧コスト/td>
  • 海抜の低い地域における店舗浸水による店舗修復のための復旧コストや店舗移転等の対応コストが発生する。
食中毒・感染症の発生
  • 気温上昇を起因とした食品衛生事故発生による営業停止、顧客離れにより売上が減少する。
  • 気温の上昇により感染症が流行し、従業員へ感染が拡大した場合、事業活動が停滞することで売上が減少し、人員不足を補うためのコスト(人員確保・セルフレジ等の設備投資)が増加する。
機会 資源効率 物流の効率化
  • 積荷コントロール等の運送の効率化により物流外部委託コストの削減につながる。
フードロス削減施策
  • フードロス削減に対する施策をとった場合、外部委託する食品廃棄物の量が減り、廃棄コストの削減につながる。
エネルギー 再生可能エネルギー、高効率設備の導入
  • 自己所有による太陽光やPPAによる電力調達、高効率整備の導入などを実施した場合、電力コストの削減につながる。
製品とサービス 新商品の開発・マーケティング
  • 消費者嗜好の変化などを想定した販売戦略に沿って、新規製品・サービスの提供を行う場合、収益拡大につながる。
  • 環境問題に対する認識の変化により、リサイクルニーズが高まり、店舗でのリサイクル材の回収が増加することで、リサイクル収益の増加につながる。
技術の発展
  • 電気自動車普及により、店舗に充電ステーションを設置する等の対応を実施した場合、集客の増加につながる。
レジリエンス 各種気候関連のリスク・機会への管理・対応能力の向上
  • 気候リスク評価、リスク分散対策など、気候変動への対応が、事業安定化およびレジリエンスの高い経営基盤の構築、それによる外部評価の向上や株価上昇につながる。

3事業インパクトの評価

生じると想定されたリスクと機会について、リスクの分類を整理し、それぞれのリスクが財務へ与える影響を大・中・小で評価を行いました。

特定したリスクと機会に対する財務への影響
リスク・機会項目 内容 リスク分類 財務影響 影響額
移行リスク 政策と法 炭素税の導入 コスト増 330百万円
プラスチック規制強化 コスト増 41百万円
フロン規制強化 コスト増 525百万円
GHG排出量削減目標を達成するための対策 コスト増
設備投資増
69百万円
市場 需要の変化 売上減少
評判
評判 株価への影響 評判
物理リスク 急性リスク 異常気象による店舗被災にともなう休業 売上減 4,548百万円
異常気象による店舗被災にともなう店舗復旧コスト コスト増 15,776百万円
異常気象によるサプライチェーンの分断 売上減
異常気象による通勤の分断 売上減
慢性リスク 平均気温/海面の上昇に伴う原材料調達コストの上昇 コスト増 325百万円
平均気温上昇によるエネルギーコストの上昇 コスト増 70百万円
海抜の低い地域の店舗の浸水にともなう休業 売上減 10百万円
海抜の低い地域の店舗の浸水にともなう店舗復旧コスト コスト増
設備投資増
124百万円
食中毒・感染症の発生 売上減
コスト増
設備投資増
機会 資源効率 物流の効率化 コスト減
フードロス削減施策 コスト減
エネルギー 再生可能エネルギー、
高効率設備の導入
コスト減 30百万円
製品とサービス 新商品の開発・マーケティング 売上増
評判
技術の発展 売上増
レジリエンス 各種気候関連のリスク・機会への管理・対応能力の向上 評判

洗い出したリスク・機会から想定される当社の世界観は下図の通りです。

2℃シナリオ
2℃シナリオ
4℃シナリオ
2℃シナリオ

リスク管理

当社のサステナビリティ委員会では、気候変動関連のリスクを定期的に評価し、事業に与える影響を取締役会に報告します。サステナビリティ委員会の報告を踏まえ、担当部署にリスク対策を指示します。リスク対策は定期的にモニタリングを図るほか、次年度以降のリスク確認を行い、継続的なリスク管理を行ってまいります。

気候変動リスク管理のプロセス
気候変動リスク管理のプロセス

指標と目標

当社は、脱炭素社会の実現を目指すべく、自社の事業活動におけるCO₂排出量を把握し、削減目標を達成するための施策を実行してまいります。

CO₂排出量の把握

当社は、自社内でのCO₂排出が環境へ与える負荷を認識し、削減のための取組みに反映するため、継続的にCO₂排出量を把握してまいります。

CO₂排出量実績

算定対象会社:株式会社天満屋ストア

(単位:t-CO₂)
2023年度
Scope1 自社でのガス、車両燃料の燃焼、およびフロン類の漏洩による直接排出 4,191.5
Scope2 他社から供給された電気の使用に伴う間接排出 30,827.4
Scope1+Scope2計: 35,019.0

※GHGプロトコルに基づいて排出量を算定しています。

※Scope3については今後順次算出を行い、削減目標を検討致します。

CO₂排出量削減目標の設定

当社では、「環境に配慮した取組みによる持続可能な社会の実現」を取組方針として掲げており、その実現のため、CO₂排出量の削減目標を設定し、CO₂排出量の削減に取り組んでいます。

CO₂排出量削減目標

Scope1+Scope2
2030年度までに店舗運営に伴うCO₂排出量原単位を50%削減(2016年度比)
2050年度までに店舗運営に伴うCO₂排出量原単位を実質ゼロ(2016年度比)

CO₂排出量削減目標

天満屋ストアではCO₂排出量削減目標を達成するため、以下のような取組みを行っています。

取組み 概要
省エネの促進 扉付きの冷蔵・冷凍ケースへの更新
省エネ対応の空調設備への更新
LEDへの切り替え
環境配慮型無水小便器の設置
(2023年度時点で4店舗導入済み)
再生可能エネルギー導入 店舗に太陽光パネルを設置
(2023年度時点で14店舗導入済み)
太陽光パネル設置が困難な店舗は、外部からクリーンエネルギー購入